<かくれんぼ>
「せんせー!」
「キクチヨせーんせーい!!」
ぱたぱたと走って来る園児たちを受け止め、キクチヨは優しく尋ねた。
「おう、どうしたオメェら?」
「あのね……」
「…………」
「見付けたぞ、こら」
「……せんせい」
大きな赤い目がこちらを見上げてくる。キクチヨは溜息を付いた。
「なあキュウゾウ……遊びなんだからもう少し見付けやすい場所に隠れてやれよ」
「…………」
「前もコマチ坊が見付けられなくて泣いちまっただろ? お前も見付けてもらわなきゃ
つまんねぇじゃねぇか」
「…………」
「……ほら、行くぞ」
手を差し伸べて抱き上げてやると、首にぎゅうっとしがみ付いてくる。
「キュウゾウ?」
「……せんせいがみつけてくれるから……いい」
「…………?」
「せんせい、すき」
「あー、せんせーもキュウゾウが好きだぞー」
「だいすき」
幼児になると積極的だなキュウゾウめ!(笑)園児×先生とか年下攻めの極みですな。
キュウゾウは先生に見付けて貰いたくて隠れスキルを上げてると萌えます。
<やくそく>
「ってな事があってよ」
「ふむ、そうかあの子か」
「人見知りする傾向があるからですかな?」
「そうとも言い切れないんだよなぁ……」
「と言うと?」
「ほら、ああやってごっこ遊びとか遊具遊びだとかは普通に参加してるだろ?」
「確かに。……会話には参加しておらんようだが」
「それが何でかくれんぼになるとああなっちまうかなァ」
「ふむ……もしかするとキクチヨ、お主相当気に入られたのかも知れんぞ」
「はぁ? どう言う事だよ」
「お、こっちに来る」
「ほれ、噂の君がお呼びだ」
「せんせい」
「おう、どうしたんだキュウゾウ? まだおかあさんごっこの途中だろ?」
「……けっこんって、なんだ?」
「どこで覚えたんだよそれ」
「キララが」
「あのおしゃま、変な知識ばっかり……」
「なんだ?」
「あー……えっと……そう、好きな人と、ずっと一緒にいるって約束する事だな」
「…………」
「キュウゾウ?」
「……おれ、せんせいとけっこんする」
「はぁ!?」
「せんせいとずっといっしょにいる」
「あ、あのな、キュウゾウ……男同士じゃ結婚は……」
「…………せんせいは、いやか?」
「いや、そうじゃなくってだな」
「じゃあ、ゆびきり」
「……うっ」
「せんせい」
「…………はぁ。わかったよ、約束な。ほら、皆と遊んで来い」
「……ん」
「おやおや、嬉しそうな顔をして」
「やはり気に入られておったな」
「他人事だと思いやがって……」
「ま、小学校に上がる頃には忘れているさ。気にするな」
「結婚の本来の意味もその内習うであろうしな」
「……だといいんだけどよ」
――結局、ガムテープの如くしつこく覚えていたキュウゾウがキクチヨを迎えに来る
事になるのだが……それはまた、別の話。
おっさま園長とベテラン保育士ゴロさん、新米保育士キクチヨのプチ職員会議。
イツモフタリデかと思いきや園児なゴロさんが想像できなかったのでシチさんが園児です(笑)。
<おとことして>
「きゃあー、たすけてー」
「キララどの、いまおたすけします!」
「がっはっはっは、動くとこの娘の命は無いぞー」
「ひきょうでげすよー」
「わたしにおまかせを。ひっさつぶきをつくっておきました」
「へいのじやるです、みんなでかかればあくのかいじんなんかこわくないです!」
「生意気な奴らめ、返り討ちにしてくれるー」
「かいじん、かくごー!」
「たぁー!」
「うお、こりゃ強い! 参った参った!」
「えい、えい!」
「だから参ったっておい……いってぇよ機械だからって手加減なしかオメェら!」
「まて!!」
「え?」
「それいじょうやるなら……おれがあいてだ」
「……なにやってるですかきゅうのじ」
「キュウゾウどのはわたしたちのみかたでしょう?」
「おとこはほれたあいてをまもるものだ」
「いみがよくわからないでげすよ」
「……キララ……」
「……えへ♪」
「ピース作るな。全くオメェはよぉ……」
カツの字一人でテンションゲージMAX。
キュウゾウがキララに変な事を吹き込まれてどんどんかわいそうな子に……。
園児でもやっぱりバットとか棒きれとかで二刀流だと思います(笑)。