<ぼくのゆめわたしのゆめ>

「おーしじゃあ今日は自分が将来なりたいものを書くぞー」
「はーい」

「キララは『りっぱなかんぬしになりたい』か。頑張れよ」
「はい!」
「コマチ坊は『ねえさまのおてつだいしたいです』? そーかそーか、偉いぞ」
「えへへ……」
「シチロージは『やくしゃになりたい』かぁ。オメェの舞台見んのが楽しみだな」
「みなさんでみにきてくださいよ」
「カツシロウは『ちちうえのあとをつぐりっぱなだんしになる』ぅ? 相変わらず固ぇなぁ」
「わたしはちゃくなんですから」
「ヘイハチは『キクチヨせんせいのきかいぎしになる』……前半部分は消しとけ」
「ええー」
「ふざけるな、せんせいはおれのだ」
「キュウゾウ……そう言うお前は何『キクチヨせんせいのむこになる』っておい!!」
「しあわせにしてやる」
「こんなん父兄に見せらんねぇよ……」



拍手の萌えコメントに触発されたネタ(笑)ショートバージョン。
ロングバージョンもありますが長過ぎだったので普通更新で。



<サイキク没ネタ>

 彼に近付こうと足を踏み出して、久蔵は凍り付いた。

「菊千代……いつまで花見をしているつもりだ?」
「まだいいじゃねえかよゴロの字よう。こんなに綺麗なのに……」
「お馬鹿。先生が待っていらっしゃるんだぞ、ああこんなに花びらを付けて」

 突然現れた緑のスーツの男が、彼の肩を掴む。振り向いた彼の髪に付いた花弁を
優しく払ってやる男。反射的に目を閉じる彼は、どこかくすぐったそうだ。
 その後二人は幾つか言葉を交わし、久蔵の視線に気付かないまま彼は校門の中へ
姿を消した。スーツの男に手を引かれて。

「…………」

 久蔵は暫くそこから動けなかった。腹の内に何かが淀んで、澱のように沈んで行く。
息苦しさを覚えて制服の胸を掴む。わけがわからなかった。

 この重苦しいものは、何だ。



サイキク第一話の没シーンです(笑)。
この段階でキュウゾウがゴロさんに嫉妬するのは早過ぎだったのですが
花びらを払ってやるゴロさんがどうしても書きたかった……!!



<これが私の主様>

 我々の主様は少々――否、かなり変わったお方です。
 普通陰陽師と呼ばれる方は我々を式神と呼び、使役致しますが……それは通常、
遠方への重大な伝令や邪悪なる物の怪との戦いにおいて、であります。
 ところが……我が主様はそうは行きませぬ。
 まず、主様は我らを呼び出し……ご下命を給わります。
 その内容は主に屋敷の掃除、炊事、洗濯、日用品の買い出し、主様の身の回りの
お世話、お客様の接待……などでございます。
 一々数えていないので何体いるのかは存じ上げませんが、主様が所有する式神は
ほぼ全員が毎日のように何かしらの仕事を命ぜられているのです。
 ……いえ、決して我らは不満など抱いてはおりませぬ。
 主様は稀代の陰陽師と誉れも高き、人間とは思えぬ力をお持ちのお方ですから。
 そのようなお方に使役して頂けるのは式神にとっても名誉な事。主となる陰陽師の
力の強さは、そのまま我ら式神の強さにも繋がるのです。

 しかも、最近は新たに主様とはまた違った、変わったお方とお会い出来ました。
 その方はどこか田舎の出身で、侍に憧れて都にやって来たとお聞きしています。
 努力の甲斐あって貴族の警護をする随身におなりになったその方は、実に変わって
いました。式神を初めて見たのだと仰るのに我らを恐れもせず屈託無くお声を掛けて
下さり、まるで太陽のような笑顔を我らに向けて下さるのです。
 主様にお会いしに屋敷に訪れている筈なのに、いつも主様より我らとお話しされて
いる事の方が多くて。主様がほんの少し羨ましそうだったのを覚えております。
 でも……主様には大変申し訳無いと思っているのですが、それでも。我々はあの、
橙の御髪のあの方が訪ねて来て下さることがとても、とても嬉しいのです。

 ですが。我々があの方をお慕いしているように、主様があの方をお慕いしておられ
るのも、重々承知しているつもりです。
 近頃主様は、あの方が訪れる刻限になると決まって我らを戻してお仕舞いです。
 けれど、それも詮無い事。

 我らの主様は、少しだけ――焼餅焼きなのですから。



「微睡の契約」式神視点。
キクたんは式神にもモテモテです(笑)。